これを読めば腕時計に詳しくなれると思います。
工業製品といっても様々あるので、
今回は腕時計に限定します。
その理由は、
1.書き手がよく知っている分野だから
2.小さい製品だから美意識が凝縮されている
3.装飾品でもあるから、デザインが重視される
以上の3つです。
文化と時計の関係をみてから、
各国の時計の特徴をみてみます。
そして、腕時計の歴史に軽く触れて、
現代の腕時計業界の現状を語ります。
腕時計のうんちくを楽しんでくれれば、幸いです。
欧州の時計産業を語るなら、宗教は欠かせない要素です。
まず、なんでスイスが時計の聖地なのか?
これには、宗教上の理由があります。
元々、時計産業が盛んな国はフランスでした。
ところが、フランスで「ユグノー」という一派が、
宗教弾圧を受けて周辺国に亡命する事態が起きます。
時計職人にはユグノーが多かったので、
大量の時計職人がスイスに亡命し、
フランスとの国境沿いに移住しました。
同じ頃、スイスの宝飾職人たちは、職を失っていました。
理由は、スイスの教会が贅沢禁止令を公布したからです。
贅沢はプロテスタントの教義に反する行為。
だから、宝飾職人は弾圧されました。
こういう状況下で、弾圧された者たちが手を組みます。
時計職人と宝飾職人は手を組んで、宝飾時計を作ります。
宝飾時計は工芸品だから、許されたわけです。
実用品としての機能性に、美的装飾性を加えて物品を作りだすこと。また、そうして作られた作品の総称。一般に、小規模なものをいい、建築は含めない。 「 -美術」
大辞林より
つまり、宝飾時計は宝飾品であると同時に、
実用品でもあるから、贅沢禁止令から逃れられたのです。
スイスやドイツ等のプロテスタントの国が多いのですが、
これは偶然ではありません。
器用な職人が多くいて、手工業が発達している国といえば、
イタリアが挙げられますね。
でも、イタリアはカトリックの国なので、
時計産業が発達しませんでした。
これについての詳しい話は、マックス・ウェーバーの著書、
「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」
この本で詳しく説明されています。
要約すると、
合理的・効率的・勤勉に働く事が、
プロテスタントの美徳だから、時間管理が重要なのです。
「時は金なり」という言葉があるように、
時間厳守の労働が、プロテスタントの文化。
そういう社会だから、時計産業が発達したわけです。
日本人は時間に厳しい、というイメージがありますが。
これは明治以降に作られたイメージです。
江戸時代の日本に来た西洋人は、
「日本人はなんて時間にルーズなんだ!」
と書き残しています。
今の日本人は残業を美徳としていますが、
江戸時代では残業は「無能の証」でした。
合理的かつ迅速に仕事をするのが美徳だったのです。
日本人が江戸時代から合理的だった、
という話を意外に思う人は多いでしょう。
西洋文明とともに合理主義が輸入された、
と思っている人が多いと思われます。
この事は、ふすまや畳を考えれば分かりやすいでしょう。
ふすまも畳も規格化されています。
どこの家でも使える互換性があります。
近世に内装品を規格化していたのは、
たぶん、日本だけだったと思われます。
こういう点から、
日本人は明治以前から合理主義者だった事が、
分かっていただけるでしょうか。
時間にルーズだった日本人ですが、
仕事には徹底的にこだわる側面も持っていました。
江戸の職人は、
自分達の仕事にプライドを持っていたので、
目立たない場所に彫刻を彫ったりしました。
さりげなく、自分の腕前をアピールしていたのです。
主に鉄道と軍隊の影響が大きいでしょう。
鉄道も軍隊も時間厳守で行動しなければなりません。
仕事には徹底的にこだわる日本人なので、
鉄道員や軍人は時間厳守にこだわる様になります。
そういう風潮が一般化して、
今の日本人は時間に厳しくなったのでしょうね。
日本の場合、時計はあくまで実用品という考えが強くて、
美を兼ね備えた工芸品だと思っている人は少ないでしょう。
だから、実用時計が発展したわけですね。
Gショックとか電波時計がいい例です。
しかし、工芸品としての時計にも挑戦しています。
スイスやドイツの後追いではありますが、
日本を代表する高級時計「グランドセイコー」は、
海外でも高い評価を得ています。
抽象的かつ多様だからです。
たとえば、「もののあはれ」「幽玄」といった表現を、
具体的に説明しろと言われたら、
多くの日本人が説明できないでしょう。
日本には、豪華な美もあれば、簡素な美もあります。
歌舞伎や金閣寺は絢爛豪華ですよね。
でも、「わび」の美しさは引き算の美です。
装飾を排してシンプルに徹する事は、
現代のモダニズム様式に近い美意識でしょう。
単に簡素なだけが「わび」ではありません。
簡素な茶室の中に、花が一輪だけ飾られている。
色が目立つのは、その花だけだから、
花の美しさが強調される。部屋全体が額縁となる。
こういう演出も「わび」の特徴です。
モダニズム様式も同様で、単純な建物の中に、
個性のある民芸品などを飾ったりします。
つまり、インテリアが主役で、建物は脇役なのです。
ちなみに、「わび」と一緒に語られる「さび」は、
古風なものや年月の経過を感じさせる物を、
美しいと感じる美意識です。
当然、工芸品も二通りに分かれます。
絢爛豪華な着物や絵皿があるし、
機能美に徹した日本刀もあります。
全ての日本の工芸品に共通する要素は、
「細部まで徹底的にこだわる事」でしょう。
代表的な日本の高級時計、
グランドセイコーは、細部までこだわって作られています。
ブレスレットやケースに施された鏡面加工は、
スイスの工作技術では難しい加工です。
時計の針のつくりでは、同価格帯のスイス時計を上回ります。
文字盤にさりげない装飾を施す事にもこだわりがあって、
雪文字盤なんかは、製法が企業秘密になっています。
ドーム型の文字盤とその曲面に合わせて曲げられた針、
こういう細かい細工もグランドセイコーの特徴です。
針を曲げるのは熟練の職人による手仕上げなので、
手間を惜しまずに作っている事が分かります。
グランドセイコーは一見すると地味な時計で、
形はありふれているし、スイス時計より簡素です。
しかし、時計について詳しい人なら、一目で分かるのです。
「美は細部に宿る」という言葉が建築の世界にありますが、
グランドセイコーはそういう時計でしょう。
細かい美が各所に宿り、それが全体の美となるのです。
「FUGAKU」という時計があるのですが、
デザインは、パッと見で分かる「豪華な和風」です。
彫金や漆など日本の伝統工芸を取り入れています。
デザイン面のみならず、機能面も画期的です。
大手メーカーで初めて「トゥールビヨン」を搭載。
(日本の独立時計師は、
セイコー以前にトゥールビヨンを作っています)
セイコーが「複雑機構も作れるぞ」と
世界中にアピールしたわけですね。
※トゥールビヨンについては、最後に説明します。
日本メーカーの高級時計制作は、まだ始まったばかり。
2000年代に入ってから本格始動した活動です。
グランドセイコーを海外展開するようになったのは、
2010年代に入ってからの事です。
技術力は高いので、後は伝統的美意識を貫けば、
日本製高級時計も一定の地位を得る事でしょう。
スイスは、ドイツとフランスに挟まれている国です。
フランス寄りの西部はフランス文化圏で、
フランス語が使われており、
美意識や文化はフランス人に近いのです。
ドイツ寄りの東部はドイツ文化圏で、
ドイツ語が使われており、
美意識や文化はドイツ人に近いのです。
スイスの時計といえば、
日本では「モンディーン」が有名なので、
シンプルなデザインが主流かと思う人もいるかもしれません。
しかし、モンディーンのデザインを考えた人は、
ドイツ文化圏の人なので、スイス時計の主流とは言えません。
あれは、ドイツ時計に近い美意識で作られた時計です。
スイスの時計メーカーは、
ほとんどがフランスとの国境沿いに存在しています。
そのため、美意識はフランス的と言えるでしょう。
それは「装飾」「足し算の美」だと言えます。
スイスの時計は、凝ったデザインの物が多い。
装飾を施した時計、からくりを仕込んだ時計、
そういうのがスイス時計の特徴です。
ブレゲの時計なんかは、
典型的かつ伝統的なスイス時計です。
ギョーシェ彫りという反射防止の為の彫金が、
あまりにも繊細なので、実物をみると凄い高級感。
手に取ってみると、持つ手が震えるくらいです。
伝統的美意識だけでは、語る事ができません。
スイスは常に新しい時計制作を求めています。
積極的にハイテク素材の導入をしていますし、
今までにない奇抜な時計を作る試みもしています。
こういう事を突き詰めて、有名になったメーカーは、
リシャール・ミルが挙げられます。
2001年創業の新興ブランドなのですが、
ハイテク機械式時計を追求する事で、
独自性を世に認められました。
新興ブランドが伝統的なスイス時計を作っても、
老舗メーカーには勝てないでしょう。
そこで、リシャール・ミルは、
「腕時計のF1」というコンセプトを掲げます。
実際にF1や航空宇宙産業で使われている
ハイテク素材を、積極的に使ったのです。
そうする事で、形は奇抜ながらも、
今までなかった軽くて頑丈な機械式時計を作りました。
現在、リシャール・ミルは、
1000万円以上の時計を売れるメーカーになりました。
新興メーカーでも、
アイデアで高付加価値を生み出せるのです。
リシャール・ミルは世界中のセレブに愛されています。
主な顧客には、サッカー選手のネイマールや
ゾゾタウンの前澤社長などがいます。
クォーツ式の場合
スイープ運針にすると
電池切れになるのが早すぎて実用的じゃないのさ
セイコーのスプリングドライブがあるけど
あれはクオーツ制御だけど
針の動力はぜんまいだからね
逆に機械式でもステップ運針は作れるんだけど
そうすると機構が複雑になるし
機械式時計らしさが失われるので
多くの機械式時計はスイープ運針
スイープ運針=高級時計みたいに判別してる人もいるからね
たぶん、世界で一番、合理主義者が多い国でしょう。
ドイツ時計は無駄な装飾を排した、引き算の美が特徴です。
機能美や機械自体が持っている美を活かします。
ランゲ&ゾーネの「ランゲ1」を見てみましょう。
ランゲ1には彫金もからくりもありません。
針や日付表示の配置だけで、
美しさと独自性を持っているのです。
文字盤の表面を構成する要素は、黄金比で並んでいます。
だから、ランゲ1はシンプルでも美しいのです。
同じくランゲ&ゾーネの「ダトグラフ」を見てみましょう。
この時計、表側は「計器です」というデザインだけど、
裏側から見える機関部が芸術的です。
機能を追求したから得られた美しさであって、
スイス時計のように装飾ありきの美しさではありません。
ノモスの「タンジェント」を見てみましょう。
時計に必要な要素のみで構成されており、
装飾は一切ありません。
ドイツのデザイン学校「バウハウス」の影響を、
強く受けているのがノモスの時計の特徴です。
代表的な例では、
「ドレスウォッチ」「ダイバーズウォッチ」が挙げられます。
これらの時計は、どこのメーカー製でも似た時計ばかりです。
ドレスウォッチは、正装する時に着ける時計です。
ドレスコードによって形が決まっているので、
デザインが似てしまいます。
「三針時計。出来ればニ針時計がベスト」
「白色か銀色の文字盤、黒革ベルト」
「丸型ケースで直径は40mm以下であること」
こういうドレスコードがあるので、皆似てしまうのです。
ダイバーズウォッチは、求められる機能があるから、
必然的にデザインが似てしまうわけですね。
生物学でいう「収斂進化(しゅうれんしんか)」です。
酸素残量と潜水時間を測る為に、
ベゼル(文字盤の外周)がダイヤルになっています。
ロレックスが最初に基本を作ったのですが、
後発のオメガやセイコーもその基本を真似ています。
オメガもセイコーも、
ロレックスの偽物を作りたいわけではありません。
必要な機能を搭載した結果、似た形になるのです。
まず、ロレックスが挙げられるでしょう。
現代的な腕時計の基本を作った事が功績です。
現代人が思い浮かべる腕時計の形は、
ほとんどロレックス製品が起源です。
また、腕時計の実用性を高めたのも功績です。
ロレックス以前の時計は、水に弱いのが常識でした。
ロレックスは防水性の高いオイスターケースを開発して、
実用性の高い時計を作った事で有名になりました。
今でいうGショックみたいなポジションにいたわけです。
このメーカーは、時計好き以外は知らないと思います。
製品の大半が100万円以上する高級腕時計なので、
時計愛好家か富裕層にしか縁がないからです。
マイナーなメーカーですが、
時計史を語る上では欠かせないメーカーです。
まず、19世紀末に腕時計を最初に発売したのが、
このジラール・ペルゴなのです。
腕時計の元祖と言ってもいいでしょう。
元々、腕時計は軍用品でした。
一般人は懐中時計を使っていました。
第一次世界大戦をきっかけに腕時計の量産が始まり、
腕時計が便利である事が知られるようになります。
1930年頃には、軍人以外も腕時計を着けるようになり、
懐中時計は廃れていきました。
それと、クォーツ時計を最初に作ったのは、
セイコーではなくて、このメーカーです。
セイコーはクォーツ時計の量産化に成功したのであり、
発明したのはジラール・ペルゴなのです。
余談ですが、この時計メーカー、日本と深い縁があります。
ペリー提督が徳川幕府に献上した時計、
日本で初めて販売されたスイス製時計、
それらは、この時計メーカーの時計だといわれています。
また、近年では「島耕作」の愛用品であることが、
漫画ファンには知られています。
島耕作が愛用しているジラール・ペルゴの腕時計は、
「ヴィンテージ 1945 ピンクゴールド製」
定価は、なんと約250万円!
こんなの買えるなんて、さすが大企業のトップですね。
時計好きじゃなくても知っているメーカーです。
おそらく、世界中のほとんどの人が知っているでしょう。
なぜ、セイコーがそんなに有名なのか?
それは、安い腕時計を、世界中で売ったからです。
セイコーが安価なクォーツ時計を発売するまでは、
腕時計は高級品でした。
(今の高級腕時計ほどではありません)
高校生や開発途上国の人など、
金がない人でも腕時計を買えるようになったのは、
セイコーのおかげです。
「スイスの時計は高級品」というイメージがありますが、
これは近年に作られたイメージです。
20世紀中期頃までは、安いスイス時計も沢山ありました。
ところが、セイコーがクォーツ時計を量産してから、
安価で高精度な時計が、スイス製機械式時計を駆逐します。
時計業界で「クォーツ・ショック」と呼ばれている変革です。
これによって、スイスの時計メーカーは大量に倒産しました。
そこで、スイスは「時計は高級な工芸品である」と、
世界各国にアピールして、日本の時計と差別化を図りました。
伝統的な機械式時計を「アート」として売り出すわけです。
世界中の金持ちがスイス時計を買ったので、
スイス時計=高級品というイメージが確立しました。
こういうイメージ戦略で勝利を得たのは、
1980年代頃なので、時計史の中では最近の出来事です。
中国で大量生産されるようになりました。
今の時代、腕時計なんか500円でも買えます。
人件費が安い国々と安売り合戦をしたら、
日本は負けてしまいます。
でも、スイスのような高級時計を作るノウハウは、
20世紀末の日本には、まだありませんでした。
そこで、ハイテク技術を使った中価格帯の時計を、
主力商品にする方針を取りました。
タフなGショック、世界中で時刻修正可能な衛星電波時計、
こういうのを押し出して生き残ったわけです。
中価格帯の時計では、シチズンが世界一のシェア。
セイコーやカシオも人気があります。
日本の主力時計メーカー3社の製品が、
世界の時計の大半であると考えられます。
しかし、低価格帯や中価格帯の時計を作っても、
利益率は大したことありません。
高級時計を作れなければ、売り上げでスイスに勝てません。
時計の世界では「薄利多売」が通用しないのです。
これは、スイスメーカーと日本メーカーを比較すると、
よく分かる事でしょう。
世界的に有名な時計メーカーの従業員数をみてみます。
スポーツウォッチで有名なタグホイヤー 従業員297人
中価格帯の機械式時計が人気のティソ 従業員250人
世界中のセレブに人気のウブロ 従業員200人
こういう中小企業が多数を占めます。
時計愛好家以外は知らない様な会社が無数にありますし、
個人事業主で時計を作っている独立時計師が沢山います。
これらの会社の製品は、ブランドを統括する大企業が、
世界中で販売するわけです。
独立して時計の販売網を独自に持っている会社もあります。
それは、スイスの時計会社としては比較的大きな会社です。
誰でも知っている高級時計のロレックス 従業員2600人
最高級時計を作るパテック・フィリップ 従業員2000人
大きな会社といっても2000人前後の会社です。
日本の時計メーカーよりはるかに小規模です。
日本の時計メーカーの従業員数をみてみましょう。
セイコー 従業員13065人
シチズン 授業員18459人
カシオ 従業員12287人
スイスの時計メーカーより、はるかに巨大な事が分かります。
日本の時計メーカーは自社で全て作る、
という違いがあります。
スイスには、ネジ専門とか針専門のメーカーがあるし、
ムーブメント(機関部)だけ売っているメーカーもあります。
こういう分業があるから、中小企業や個人事業主でも、
時計を作る事が出来るわけです。
日本の時計メーカーは、
大企業が自分達だけで何でも作ります。
時計製造に必要な部品を全て自社生産可能な時計メーカーは、
世界中でセイコーだけです。
日本の方が大企業なんだから、
スイスより儲かっているのでは?
そう思う人もいるでしょう。
しかし、日本の時計メーカーは、
スイスの時計メーカーに負けているのです。
ロレックスの売上だけみても、
セイコーとカシオの4倍の売上なのです。
カシオとティソが同じ位の売上ですかね。
従業員数は約50倍の差がありますけど。
高級時計販売は利益率の高い商売です。
だから、日本メーカーは高級時計市場に参入しようと、
一生懸命に努力しているわけですよ。
ここでは、
30万円以上の時計を高級時計、
1万円以下の時計を安物時計、と定義します。
デジタル機器に囲まれているから
アナログ製品が恋しくなるのか?
一種のノスタルジーなのか?
今の若者には、ぜんまいで動く機械式時計が珍しいのか?
理由は分からないけれど、
値段を問わずに機械式時計の生産量は増え続けています。
25歳~40歳の年齢層が、
高級時計に興味を持っています。
以前は、経済的にゆとりがある中高年層が、
高級時計を買い支えていました。
高級時計の広告が載っている雑誌は、
レオンみたいな中高年向けファッション誌ばかりでした。
ところが、最近ではアラサー向けファッション誌でも、
高級時計の特集を組むようになってます。
これは仮説ですが、
都会の若者は車やバイクを買わないので、
こだわるメカが時計になっているのかもしれません。
Gショックなどの特殊な時計を除くと、
中価格帯の時計の売上が落ちています。
電車やバスの中で、他人の時計を観察すると、
乗客が着けている時計は、
高級時計か安物時計のどちらかである場合が多いですね。
これは所得格差の拡大が影響しているのでしょうか?
特に20~30代はもっとも所得格差が激しいですよね。
でも、高級時計なんて車やバイクに比べれば安いし、
趣味で買おうと思えば貧乏人でも買えます。
だから、一概に所得格差のせいとは言えないでしょう。
時計趣味者が増えている、という見方も出来ます。
アップルウォッチの売上がロレックスを抜いて
話題になり、これからはスマートウォッチの時代、
と豪語する人もいます。
しかし、それは的外れな見方でしょう。
ロレックスの売上はまったく落ちていないからです。
これは、高級時計とスマートウォッチでは、
客層が違う事を示唆しています。
最近は、機械式時計に電子装置を組み込んで、
スマートウォッチ化した製品も出てきています。
万年筆で有名なモンブランは、
近年では時計も作っており、
その事業は成功しています。
モンブランは事業の多角化に熱心で、
近年では主力商品である万年筆の売上が、
時計などの装飾品より下回っています。
最近、カメラで有名なライカも参入してきましたが、
参入して来たばかりで、実力や人気は何とも言えません。
機械式時計の三大複雑機構のひとつで、
重力の影響を排除し、精度を高める機構。
作る事が難しいので、
これを作れる事は時計メーカーの技術が高い事の証左です。
フランス語で「渦(うず)」を意味する言葉です。
どういうものかは、文章で説明するより、
動画で説明したほうが分かりやすいでしょう。
トゥールビヨンを大型化した玩具の動画を添付します。
動画をみれば複雑な構造である事が理解できます。
これを1円玉くらいの面積に収めるのですから、
制作に高度な技能が必要なのが、分かって貰えるでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=Az52jT7CKOU
セイコーの宝飾時計ブランド「クレドール」
そこから発売された「FUGAKU」
セイコーで初のトゥールビヨン搭載時計です
定価は5000万円
こういうのは技術力アピールの為の製品だから
売れても売れなくてもいいんでしょう
FUGAKUと同じくクレドールから出た製品
「クレドール ミニッツリピーター」
定価は3500万円
ミニッツリピーターとは
音で時刻を知らせる装置です
高音と低音を鳴らす事で、現在時刻を知らせます
低音が鳴ると1時間
低音・高音が交互に鳴ると15分
高音が鳴ると1分を表します
たとえば、10時35分を告げる場合
低音が10回、低音と高音が2回、高音が5回
という鳴り方をします
電燈が普及していない時代では
闇夜でも時間を知る事が出来る
実用性がありましたが
現代では音を鑑賞する為の機構です
これもトゥールビヨンと同じく
三大複雑機構のひとつ
では、もうひとつの複雑機構は何か?
それは「永久カレンダー」です
月、曜日、日付(西暦を表示する時計もある)
これらが表示されるのですが
表示される時間の調整は
時計が稼働している限り、一切不要です
うるう年も判別するため
パーペチュアル・カレンダーみたいに
2月末日の日付調整をする必要もない
コンピュータで永久カレンダーを作るのは
とても楽だし低コストで行えるが
歯車やぜんまいで動く機械式時計では
永久カレンダーの制作はとても難しい
セイコーは永久カレンダー搭載機を
まだ作っていませんね
たぶん、そのうち作ると思います
一般人から見たらアホにしか見えないけど
1000万円越えの高級時計は
富裕層が資産として持つ需要があるんだよ
たいていは、少数生産・限定生産だから、プレミアがつく
長年所有していれば骨董品としての価値もつく
10年以上の長い期間を考えれば、お得な買物なんです
典型的かつ伝統的なスイス時計
ブレゲ・クラシック
文字盤の細かい凹凸は
ギョーシェ彫りという彫金で
職人が手仕上げで作っている
定価は200万円~300万円くらい
高価なので雲上時計と呼ばれている
麻生太郎さんが愛用者ですね
ジラール・ペルゴのからくり時計(スイス時計)
トゥールビヨンとスロットマシンを搭載している
定価は約6600万円
こういうのは、富裕層が遊びで買う品であり
社交界で話の種にする為に買うものだ
https://i.imgur.com/Yk8NybJ.jpg
https://i.imgur.com/HGJKmjs.jpg
からくり時計には「エロティック・オートマタ」というのもある
スイスの新興ブランド
リシャール・ミルの時計
F1や航空宇宙産業で使われている
特殊合金やセラミックをぜいたくに使っている
そのため、機械式時計とは思えない軽さで
衝撃や振動にも強い
機関部が表から見える時計は
マリー・アントワネットの時代から作られている
スイス時計の伝統的要素のひとつだ
定価はモデルによって大きく異なる
安いモデルで1千万円前後
普通のモデルで数千万円
高いモデルで数億円
最低価格から考えても富裕層しか買えない
これがお気に入り
リシャール・ミルは新興ブランドなので
数十年後はどうなっているか分かりませんね
会社は起業してから「5年の壁」「10年の壁」「30年の壁」がある
5年の壁は内輪もめや銀行融資の失敗で潰れるケース
10年の壁は景気の波に飲まれてしまうケース
30年の壁は跡取りがいないから潰れるケース
リシャールミルは後継者がどうなるか、まだよく分からない
まあ、金持ちはそんなの気にせず買うけどね
この時計、数十gしかないんですよ
どちらかといえば大きな腕時計なのに、重さはチプカシ並
あと、Gショックほどじゃないけど耐衝撃性に強い
新製品のプレゼンで
繊細なトゥールビヨン搭載機を放り投げたけど
まったく壊れなかった
欠点を挙げるとすれば
成金の時計のイメージが強いところかな
十数年前にヒルズ族の多くがフランクミュラーを着けていたから
成金時計のイメージがついてしまったけど
今はフランクミュラーからリシャール・ミルがその立場を引き継いでいる
ゾゾタウンの前澤社長とか秋元康とか
いかにもな成金が愛用しているのが知れ渡っているからね
ノモスのタンジェント(ドイツ時計)
機械式時計でコスパが良い時計といえば
これかグランドセイコーが挙がる
50万円以下の時計で
自社製ムーブメントを搭載しているのは
これとグランドセイコーくらいだろう
20万円くらいで売っているので
ちょっといい時計が欲しい人にはオススメ
IWCのポルトギーゼ
このメーカーは時計好きなら誰でも知っている
ポルトギーゼは1930年代に販売開始されたが
その当時から現代まで基本デザインは変わらない
車でいえばポルシェみたいなものだ
スイスの時計会社ではあるが
本社のある町・シャフハウゼンは
ドイツ領内に食い込んでいる
町田市が神奈川県に食い込んでいる様に
だから、実質的にはドイツ的センスの時計と言える
ポルトギーゼは値段がピンキリで
写真の時計の定価は70万円くらいだが
複雑機構を搭載したモデルだと
定価1000万円くらいする時計もある
ポルトギーゼ・シリーズの大半の定価は
100万円~500万円くらいの価格帯だ
例を挙げると、アニュアル・カレンダー搭載機が
定価230万円位なので、特別高価なわけではない
アニュアル・カレンダーとは
2月末日以外は日付調整が不要なカレンダーだ
置物にするだけなら関係ないけど
稼働可能な状態で保管するならオーバーホール代がかかる
まあ、車やバイクをメンテ&保管するより安いけどね
今時計のコレクション始めるのは無理だなあ…残念
金持ちに任せておきましょう
庶民はお気に入りを1~2本持っていれば十分ですよ
グランドセイコーの手巻き式時計
国産のドレスウォッチ
定価は約50万円
一見すると何の変哲もない時計だが
よくみると細部のつくりが凄い
文字盤はドーム型に盛り上がっており
針は文字盤に合わせて曲げられている
風防は薄い円筒形のサファイアガラス
安物時計と高級時計は立体感で判別できる
ちなみに、これの前モデルは
安倍総理も愛用している
ロレックス・サブマリーナ
ダイバーズウォッチの元祖
定価は80万円~90万円くらい
ただ、ロレックスの定価はあてにならない
わざと生産本数を少なくしているので
市場に出るとすぐに売り切れて
テンバイヤーが高値で売る様になるからね
半年待ちとか1年待ちのモデルも多いから、プレミアがついてる
グランドセイコーはだいたい同じ形だ
これは典型的な形のモデル
この手のメタルブレスの時計は
普通の人が腕時計と聞いて思いつく時計だろう
スイス製の同類に比べると控えめなデザインだ
グランドセイコーは種類が多いので
モデルによって定価も様々だ
一番安いモデルで20万円くらい
一番高いモデルで600万円くらい
平均価格は40万円~50万円くらい
最新モデルです
旧モデルでは、3時位置に日付表示があって
文字盤の模様が縦ストライプだったのですが
新モデルでは、6時位置に日付表示が移動して
文字盤の模様が横ストライプに変わりました
何か質問があれば受け付けます
でも、11時半ごろには寝てしまうので
遅い時間の質問は、返答が明日以降になるかもしれません
まとめサイトさん、まとめたければ、この状態でまとめてどうぞ
ありがとう
引用元: http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1532863710/
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