7月19日、エプソンの腕時計新ブランド「TRUME」(トゥルーム)発表が報じられました。

 

マスメディアでは「プリンタのエプソンが時計作った」みたいにも受け取られましたが、実はセイコーの機械式腕時計も世界初のクォーツもEPSONが開発。昨年は子会社だったオリエントを吸収もしています。

 

日本企業によくある「作り手」と「売り手」の対立なのか? 新ブランド「TRUME」を覗いてみます。



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by:TRUME(トゥルーム)ウオッチ | エプソン


セイコーじゃないセイコーのおさらい

非常にややこしい「SEIKO」と「EPSON」の成り立ち、大雑把にまとめてみましょう。

 

明治時代、服部金太郎が創業した「服部時計店」の製造部門が「精工舎」。  クロックが「精工舎」で、ウォッチが「第二精工舎」。  戦時中の昭和17年に、第二精工舎が長野の諏訪に疎開。  諏訪で時計店を営んでいた元社員が「大和工業」という協力工場を作ります。これがエプソンの源。

 

戦後、疎開工場を合併し「諏訪精工舎」に。  服部時計店がSEIKOブランドで売る腕時計は、東京・亀戸の第二精工舎と、諏訪精工舎の2系統がグループ内で競合する形に。  ここからは有名な話で、東京五輪の計時用に世界初のプリンタを開発、その「EP-101」の子孫ということで「EPSON」。

 

機械式SEIKOマニアには「亀戸」「諏訪」で通じますね。  亀戸の工場跡は商業施設、アイドルイベントのメッカ「サンストリート亀戸」になり、さらに昨年閉鎖されて今後タワマンに。

味覇と創味シャンタン!?

エプソンというと(堅気な人には)腕時計のイメージが弱いのですが。  名機「マーベル」や、世界初のクォーツ腕時計で近年その名称が復活した「アストロン」など、SEIKOの発展に欠かせない部分を開発。

 

服飾ブランドや安物雑貨時計に、シチズン系ミヨタと並んでよく使われる「日本製ムーブメント」にも「S EPSON」の刻印があります。

 

また、傘下に入っていたオリエントを昨年、吸収しました。

 

そんなこんなでSEIKO腕時計を作ってきた「プリンタのエプソン」は、セイコーHDより売上が5倍の1兆円企業。

 

20日の報道では、セイコーに「事前に連絡しなかった」と。  「グループではあるが子会社ではない」が、独自ブランド発表の裏にあるのでしょうか?  「味覇」vs「創味シャンタン」を、もう少しマイルドにした構図も想像できます。

 

国産3社を網羅する「全部乗せ」

新ブランド「TRUME」は、ウエアラブル端末路線、センサーを多用した究極のアナログ時計。  機械式は身内のオリエントスターやGSあたりに任せ、カシオ・オシアナスやシチズン電波勢、そして自分で作ったSEIKOアストロンも食ってしまう勢いです。

 

アストロンを作ったエプソンが、アストロンと競合………うーん、複雑ですね。  GPS、気圧・高度、方位の3センサーを内蔵。

 

さらに別体の「エクスパンデッドセンサー」で温度、紫外線、歩数、消費カロリーを計測して、本体とブルートゥースで通信。

 

これらの計測結果は液晶を使わず、アナログ針で行う仕組みです。  時刻補正はGPSでまかない、従来型の電波時計は積んでいないので、ソーラーのみで長い電池持ちとのこと。

 

カシオとシチズンとセイコーまとめて喧嘩を売ったような「全部乗せ」時計。

 

28万の時計ですから、デザインも値段相応に大人ですが、このハッチャケぶり、どこかオリエントの面影を探してしまいませんか?





ライター:馬場重郎