前編ではフュゼ・チェーン伝達機構の構造に触れて話をさせて頂きました。

後編では、コンスタントフォース機構のもう1つの代表的な機構であるルモントワール フュゼ・チェーンとコンスタントフォース機構に類する定力装置について述べていきたいと思います。




前編はこちら
コンスタントフォース機構「フュゼ・チェーン」とは(前編) | ウォッチちゃんねる


ルモントワール フュゼ・チェーンの歴史

ルモントワールとはフランス語のremonterに由来し「巻く」の意味を持っています。重力ルモントワールは1595年にスイスの時計技師ヨスト・ビュルギが発明し、ヴィルヘルム4世の為に製造した“kalenderuhr”(3ヶ月動作するゼンマイ駆動のカレンダー付き卓上時計)が現存するルモントワールを備えた最古の時計と見なされています。


ルモントワール フュゼ・チェーンの仕組み

ルモントワール フュゼ・チェーンでは、メインとなるゼンマイのトルクを一定量ずつ別の場所に貯え、その力を使って脱進機を動かし精度を向上させる事を狙っています。第2の別の動力源としては錘(+重力)やゼンマイが使われていて計時装置を動かし、主ゼンマイのような計時装置の主動力源によって定期的に巻き上げられます。動力源は基本的に脱進機に近い場所に設置され歯車装置の非均等な摩擦により引き起こされる動力の変動を均等化しています。

腕時計に組み込まれたユニットは普通の時計の四番車(1分で一周する歯車)の位置に装着されます。

始動歯車(秒の小歯車と連動)と秒の歯車(ガンギ車の歯車を作動させる)コンスタントフォース機構のひげゼンマイは同軸(重なった位置)にあり、始動歯車には主ゼンマイからのトルクが伝わり、この歯車が解放されている時にコンスタントフォース機構のひげゼンマイが巻き上げらます。

秒の歯車はガンギ車の歯車を作動させますが、これはコンスタントフォース機構のひげゼンマイによって回転します。

コンスタントフォース機構のひげゼンマイは秒の歯車を回転させ、秒の小歯車を介して香箱から動力を得て巻き上がります。秒の歯車と始動歯車を繋ぐ役割も持っています。 コンスタントフォース機構のカムは秒の歯車によって回転し、コンスタントフォース機構のひげゼンマイが巻き上がった瞬間を認識します。

カムによりアンクルが振られ、1秒ごとに始動歯車を止めている爪が解放されます。

始動歯車がアンクルのもう片方の爪に引っ掛かるまで回転していき、ゼンマイにエネルギーを伝えます。

秒の歯車がゼンマイの引っ張りによって回転します。

そしてまたカムによりアンクルが振られるという一連の動きを繰り返していきます。

1秒ごとにエネルギーをチャージする回転角度はアンクルの爪で規定され一定となり、ひげゼンマイが毎秒巻き上げられる角度は一定で、バネの特性により脱進機に供給されるエネルギーも一定となっています。

ルモントワールが勢いよく動作している間はキャリッジは1秒ステップで跳ね、衝撃音をならし余ったトルクを音にして放出し、トルクが足りなくなってくると滑らかな動作に切り替わっていきます。

これは簡易的なパワーリザーブインジケータとして使用できます。

このルモントワール型はフュゼ・チェーンと違い、巻き上げる以外のトルクは捨てている事になります。

この機構はFP JourneやDeWitt、Christophe Claret、IWCなどが搭載しています。

A Lange & soehneもルモントワール型のコンスタントフォースとトルクの強いゼンマイを使い744時間パワーリザーブのランゲ31を作っています。

IWCは特許技術を用いたコンスタントフォース機構をトゥールビヨンの中に組み込み、安定した精度を生み、グランド・コンプリケーションとしてインヂュニア コンスタントフォース トゥールビヨンを発表しています。



コンスタントフォースに近い働きをする機構

・デッドビート

デッドビート機構もその構造により1秒ごとにトルク蓄積と解放を繰り返しコンスタントフォースに近い働きをします。


・コンスタントエスケープメント

Girard Perregauxが開発した機構で、脱進機の構造を変更し、脱進機内で力を一定にすることを目指した面白い取り組みです。

いかがでしたか?いずれも小さな『時計』という機械が不変の時を刻むための定力への取り組みです。多くの人の発想や不変への熱望が込められた機械式時計の幅広く奥深い魅力を感じて頂けると幸いです。










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