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コンスタントフォース機構「フュゼ・チェーン」とは?(前編)

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定力そして不変への取り組み

時計のゼンマイは、巻き終えたとき一番強く、中間では安定した力を発生させ、解けきる直前が一番弱い、このようなゼンマイトルクの変化を生じさせます。

コンスタントフォースとは、このトルクの変化を何らかの方法で一定化する事で精度を上げる取り組みです。

考え方はとてもシンプルなものですが、実際に実現させる事はかなり大変です。

トルクを一定化させる取り組みという事でコンスタントフォース機構(定力装置)と呼ばれ、代表的な方法にはとしてはフュゼ・チェーンやルモントワールと名付けられたものがあります。


フュゼ・チェーン(鎖引き)伝達機構

円錐状の滑車(フュゼ)にチェーンを巻いた無段変速機構を香箱と輪列の間に差し込みトルク変化を打ち消すように変速比を変化させる方法です。

15世紀の初めにレオナルド・ダ・ヴィンチは自転車のギアに似たようなデザインをスケッチしていました。

このシステムでは香箱は自転しながら、円錐形のフュゼに取り付けられたチェーンを巻き上げていきます。

チェーンが完全に巻き上げられると、円錐の頂点と香箱がつながります。

その位置でのデコの作用は最小になり、輪列に伝わるトルクは小さくなります。

ゼンマイの張力が少なくなるほど作用点がフュゼの底面に近づき伝達されるトルクの量も大きくなります。

こうしてゼンマイが巻き上げられた状態からほどけきる直前まで、テンプに伝達される力は一定のものになります。

フュゼ・チェーンの、この原理なら完全にトルク変化を打ち消す事ができますし、無段変速でトルクと速度の比率を変えているだけなので、エネルギーも無駄にならずに済むのです。

Zenithではこのシステムを「フュゼ・チェーン式伝達装置」と呼んでいるようです。

このフュゼ・チェーン伝達機構は、特に大型の時計で成功を収めます。

この機構は、非常に高い制度が要求されるマリン・クロノメーター(船舶の位置を天体観測によって同定する為の基準時計)などに使用され、また同じような機構が懐中時計にも使用されました。

しかしこのフュゼ・チェーン伝達機構は香箱+チェーンとほぼ同径の円錐状の滑車(フュゼ)が必要な訳ですから、小型化は難しく、腕時計に使用するには限界があったのです。

現在ではこのフュゼ・チェーン伝達機構を搭載した腕時計をA Lange & SoehneやBreguet、Zenith、Thomas Prescher などが発表。

更にチェーン部分を可視化したりグラスバックから観る事を可能にして、あたかもこの構造が1つのデザインであるかのように捉え、機構の深い味わいを伝えています。

また、この伝統的な機構を、現代的にアレンジしたRomain Gauthier社のLogical Oneでは香箱からの出力に変速機を組み合わせ、1重のチェーンにし、滑車ではなくスネイルカムを使用しています。

巻き上げをプッシュボタンで行う機構や、ルビーを使用したネックレスを思わせるチェーンを採用したり、新しい発想を随所に折り込み変革させています。

コンスタントフォース機構も少しずつ進化しながら、現代にその系譜を確実に伝えています。

後編ではもう1つのコンスタントフォース機構ルモントワールについてお伝えしたいと思います。



後編はこちらから

コンスタントフォース機構「ルモントワール」とは(後編)




『コンスタントフォース機構「フュゼ・チェーン」とは?(前編)』へのコメント

  1. 名前:時計じかけの名無しさん 投稿日:2017/10/11(水) 13:05:48 ID:b51d1ee41 返信

    ttps://www.youtube.com/watch?v=N35jJKJKRl8
    にも載ってたな、この機巧

  2. 名前:時計じかけの名無しさん 投稿日:2017/10/11(水) 21:08:25 ID:35c642796 返信

    マリンクロノメーターでは意外と最近まで生き残ってた機構だよね