地球は太陽の周りを365.2422日で一周しています。私たちが現在使っている時間はグレゴリウス歴と呼ばれ400年で366日の年を97回作り、平均365.2425日の時に修正している太陽暦。
そして通常時計の文字盤に示されている時刻は「平均太陽暦」といって1日を作為的に24等分した時間です。このように時間は太陽と地球との関係から生まれました。
もう1つの時の形、1ヶ月。こちらは月の満ち欠けの周期である約29.5日を元に作られた概念で1年は12に分けられ12ヶ月で同じ季節が巡ってきます。この季節の移り変わりを表している暦は月の満ち欠けをよむ事で作られました。
また1日の昼の時間と夜の時間を12という数で分割した理由も月の周期に関係しています。
私たちの時間は太陽と月によって成り立っているのです。
『月』の持つ2つの時
「月」は暦と深い関わりがありますが、その月には2つの重要な周期があります。
それが29.53日の周期である『朔望月(さくぼうげつ)』と27.32日の周期である『恒星月(こうせいげつ)』です。
朔望月とはその名前の通り「朔(新月)」と「望(満月)」といわれる月の満ち欠けの周期で29.53日で1周します。この周期は太陰暦として使用され、29日の月を小の月、30日の月を大の月と呼んでいました。
ではもう1つの27.32日の月の周期は?この「恒星月」とはいわゆる月の公転時間で、地球の周りを一周する時間です。
それにしてもなぜ、恒星月と朔望月は違うのでしょう。そもそも地球が止まっていれば、月は27日をかけて1周し月の満ち欠けも1回りします。しかし実際には地球自体も太陽の周りを回っているので、月は恒星月+地球の公転分の角度、地球の周りを回らないと元の満ち欠けの状態に戻れないのです。そのため月の満ち欠けを表す朔望月という時間が生まれました。
月の相を表すムーンフェイズ
新月から満月を経て再び新月に戻る「朔望月」。この月齢の経過を月相(月の形)の変化で表示していく機構がムーンフェイズです。一般的な機構では月の満ち欠けの周期を29.5日として、2つの月が描かれた59枚の歯を持つムーンフェイズディスクで月の形を示す構造です。ですが、実際の月の動きは複雑であるため、厳密な月の周期の平均値は29.530589日(29日12時間44分2.8秒)で44分程度の端数が生まれてしまいます。この約2年7ヶ月20日で1日生まれる誤差を修正する為、複数の歯車を追加する事で歯数を増やすなど、より高度な精度を実現したモデルも生み出されています。ムーンフェイズは審美性に優れた高級時計ならではの優雅な表示機構といえます。
ムーンフェイズ機能を搭載した魅力的な機械式時計
・朔望月をほぼ正確に再現し1058年間に1日しか誤差を生じないA Lange & Soehneの1815ムーンフェイズ。文字盤には北斗七星があしらわれています。超絶技巧の結晶です。(画像は1815アニュアルカレンダー)
引用元:A.ランゲ&ゾーネ / 1815
・6時位置にムーンフェイズ表示を配しているBreguetのパーペチュアルカレンダー・レトログレイドは永久カレンダー機構も備えています。日付表示はレトログレイド式。
引用元:Perpetual calendar | Breguet
・圧倒的な美しさを誇る文字盤にパーペチュアル機能(永久カレンダー)、月・日・曜日のトリプルカレンダーに西暦を示す4桁の表示。更にムーンフェイズまで時の全てを詰め込んだ9.2mmの驚異的薄さが魅力のジャガー・ルクルトのウルトラスリム・パーペチュアル。
引用元:マスター・ウルトラスリム・パーペチュアル 1308470 | ジャガー・ルクルト
・月齢表示の誤差を122.5年で1日にとどめた高精度ムーンフェイズ機構を搭載。12時位置に配した実写の月をプリントしたムーンフェイズのシャウボーグウォッチのムーンギャラクシー。
引用元:SCHAUMBURG – シャウボーグ – moonシリーズ moon galaxy
・月面を精巧に描き、月の満ち欠けの様もリアルなマーティン・ブラウンのセレヌ。こちらも122.5年で1日の表示誤差。
引用元:Martin Braun セレヌ SELENE
どんなに太陽暦の中で生きても、機械式時計の小さな宇宙は限りなく進化し続けています。時のもう1つの姿をムーンフェイズ時計で味わうのも、日常を離れた魅力的な時の過ごし方かもしれません。
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