永久カレンダー(パーペチュアルカレンダー)とはどういう仕組み？

ブレゲを始め、昔の時計技師は森羅万象に通じた学者のような立場の人が多かったようです。特に天文学や暦と時計の繋がりは深く、小さな世界に時間の全てを表現しようと試行錯誤の末に生まれた『永久カレンダー』今回はこの永久カレンダーの仕組みについて書いてみます。

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永久カレンダーの歴史

永久カレンダー(パーペチュアルカレンダー)は1700年末期に、天才時計師ブレゲにより開発されました。当時は懐中時計に組み込まれたこの機構を腕時計に初めて搭載させたのがパテックフィリップ。1925年の事でした。

永久カレンダーとは

一般的な時計が31日を1周期として設計されているのに対し、半永久的に手動での操作不要で暦に合った日付を表示してくれる機能の事をパーペチュアルカレンダーと呼びます。

一般的な日付表示の場合、31日に満たない月の月末もしくは翌月1日に実際のカレンダーに合わせて手動で修正しなければいけません。

しかしパーペチュアルカレンダーは月の日数の違いやうるう年まで自動調整してくれます。

年に5回の手動修正を必要としないこの機構は、とても実用性に富んでいます。

その為、電子回路が組み込まれたクォーツやデジタルウォッチではこの機能が主流なのですが、機械式時計は歯車のみで4年間、計1461日分ものメモリーを保持していく機構を構築する訳ですから、その複雑さは安易に想像出来ると思います。

一体どういう仕組みでこのような複雑な事が成されるのでしょう。

グレゴリウス暦

現在、世界的に採用されている暦は『グレゴリウス暦』です。このグレゴリウス暦は、それ以前世界的に採用されていた『ユリウス暦』に修正を加えたものです。

基本的に『ユリウス暦』同様に世暦年が4で割り切れる年を『閏年』として、その年の2月28にちの翌日を2月29日の閏日とします。しかし閏年によって誤差を設けたユリウス暦は逆に1年で「約11分」の遅れを作り出してしまいます。この誤差を調整する為、グレゴリオ暦では下二桁が00となる年は閏年としない(例1900年)、ただし00の年であっても4で割り切れる年は閏年とする(例1600年や2000年)という例外を設けた訳です。つまり現在製造されている永久カレンダーは2100年2月28日まで対応可能なものという訳です。

永久カレンダーの構造

ほとんどの永久カレンダーは基本ムーブメントの中に永久カレンダー機構を組み込み複雑化されているので、今回は分りやすく基本ムーブメントに「永久カレンダーの単独機構を乗せた」『IWCのダヴィンチ』を例にとって説明します。

時計の中に組み込まれたカレンダー機構の中、右下(4時から5時の位置)にある、上下に重なった2つのカムが、その仕掛けの重要な役割を担います(便宜上カムA、カムBとします)。この2つのカムは、4年間の月を調整するカム(カムA)と、4年で1周するように48つの歯が切られたカム(カムB)となっています。

下側にある48つの歯が切られた歯車(カムB)は右上(3時の位置)にある日付表示用の日送りカムと噛み合っていて、日送りカムが一回転(1ヶ月)すると、1歯動く仕組みになっています。上にある月を調整するカム(カムA)は、歯によって切り込みの深さが変えられています。深さは4種類で、浅い切り込みから、大の月(31日)、小の月(30日)、うるう年の2月(29日)、平年の2月(28日)となっていて歯の溝の深さによって、日送りレバーが作動して、必要な日数分日を送る形になります。切り込みの最も深い28日の部分であれば、3日分を先送りする事が可能です。

月が変わるときにはカムBにブレーキをかけている突起が動き日付表示用の日送りカムを規制しているレバーがスリップして日付を「1」に変えます。

また(カムA)に輪列する6時の位置にある12の歯に切られた西暦カムを1歯分回し、1年で1周させて西暦表示を動かしていきます。

説明すると簡単なように感じられるかもしれませんが、歯車の歯の調整や、レバーによる制限やスリップの仕組みはとても精密でデリケート。大変な技術が要求されるものになります。その為、今でも永久カレンダーの修理や調整は、熟練された職人の世界と言われています。

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