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流れ続ける時を止めない「パワーリザーブ表示機構」とは



クオーツ式時計という圧倒的な精度を誇り便利な機能を数多く搭載する時計が生まれてもなお、人々を魅了し愛され続けている機械式時計。

機械式時計の魅力はなんといっても時刻を示すだけではなく、それを扱う人と共に胎動し続けるところにあります。この胎動し続ける時を巧みに延ばしていく為に便利な機能がパワーリザーブ表示機構(パワーリザーブインジケーター)です。





古典的なパワーリザーブ表示機構

古典的なパワーリザーブ表示機構といって真っ先に名前があがるのは、18世紀末にアブラアン-ルイ・ブレゲがジュルニャック・サン・メアール伯爵の為に製作した懐中時計「ブレゲNo5」です。11時の位置に取り付けられた扇形の目盛を移動する針により主ゼンマイのパワーリザーブ量が確認できる仕組みになっていました。

breguet_no5_hr引用元: No.5 | Breguet

パワーリザーブの意味

機械式時計は主ゼンマイ(メインスプリング)の力によって動きます。この主ゼンマイはリュウズを回したり、自動巻きではローターの回転で巻き上げられます。

リュウズを回すと、その回転が歯車などに伝わっていき香箱に収められている主ゼンマイを巻き上げます。香箱真に巻き上げられた主ゼンマイは、今度は解けて元の位置に戻ろうとします。このときのエネルギーが歯車を回す原動力となります。

「パワーリザーブ40時間」という腕時計の説明は「主ゼンマイを完全に巻き上げた状態から40時間は動き続ける」といった意味の表示です。

パワーリザーブ表示機構

主ゼンマイがどの程度巻き上げられているのかは、通常外部からは確認出来ません。その主ゼンマイの巻き上げ残量を分りやすい形で文字盤やシースルバックに表示させたものが「パワーリザーブ表示機構」です。

主ゼンマイの巻き上げ残量が少なくなってくると、トルクが低下して制度が確保出来なくなる為、そのデメリットを使用者に警告し時計の精度を保つ役割も持っています。

また、巻き上げ量がわかれば巻き上げ過ぎて主ゼンマイを切ってしまうという事も避けられる為、時計にダメージを与える機会も少なくなります。手動式機械時計のユーザーにはありがたい機構といえます。

このパワーリザーブ表示機構の針を動かす為には、香箱と連動させる精巧な減速機構が必要です。1週間巻き上げモデルであれば、1日に針が動く幅は1mm 程度。パワーリザーブが複雑機構に分類されるのは、こういった要因があるためです。

パワーリザーブの長さ

パワーリザーブは主ゼンマイを収納する香箱のサイズや主ゼンマイの最適な長さといった諸条件により、40~50時間のものが一般的です。

このパワーリザーブを長くするため香箱を2つ用いた「ツインバレル」が開発され70時間以上のパワーリザーブが実現しました。2000年以降には、香箱の数を更に増やしたり、単体の大型香箱を用いて7~8日の画期的ロング・パワーリザーブを実現したモデルも登場しています。

この腕時計サイズの機械式ムーブメントでは、1週間パワーリザーブが限界だと思われていました。しかしこの常識をA Lange & soehneが31日パワーリザーブというモンスターモデルを発表し打ち砕きました。同社の説明によると、持久力の鍵となるのは常に一定の動力を供給する特許技術の動力制御メカニズムで、香箱と脱進機の間に収められた動力制御メカニズムは高精度の要でもあるとの事です。

今年2017年、A Lange & soehneはモンスターモデルである31日パワーリザーブ機能を搭載したホワイトゴールドケースのランゲ31を世界限定100本のみ発売しています。

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引用元: A.ランゲ&ゾーネ / ランゲ31

パワーリザーブ表示機構が長らく腕時計に採用されなかった理由

懐中時計には時々見られたパワーリザーブ表示機構を腕時計に採用したのはパテックフィリップが始まりと言われています。それまではパワーリザーブ表示機構は腕時計には搭載される事がありませんでした。これには2つの理由があります。1つは香箱に直接噛み合う機構である為に、パワーリザーブ表示機構の不具合が、直接時計を止めてしまう原因になる可能性があったから。もう1つが、機構自体が複雑になり過ぎる。というものでした。

パワーリザーブ表示機構の駆動輪列は香箱に噛み合っています。そして主ゼンマイを巻き上げる時に主ゼンマイを取り付けている香箱真がパワーリザーブ用輪列を動かしパワーリザーブ表示を進め、解ける時に香箱上に固定された歯車に噛み合っている歯車がパワーリザーブ表示を戻していきます。パワーリザーブの駆動輪列には表示を進める機能と、戻す機能の2系統が必要になるのです。この為必然的に部品は増え、その部品点数の2乗に比例して、時計も壊れやすくなってしまいます。時計の中枢部への大きな負担はあまり好ましい事とは言えなかった訳です。

その後パワーリザーブの先駆者であるパテックフィリップは視認性と省スペースを両立させる研究を続け、様々なパワーリザーブ表示機構に挑戦しています。そして現在も多くのメーカーに影響を与え続けています。


パワーリザーブ表示機構という「時を止めない」為に便利な機構、少しでもご理解頂けましたか?
この機構が表示しているのは機械式時計の息づかいという特別なものかもしれません。







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『流れ続ける時を止めない「パワーリザーブ表示機構」とは』へのコメント

  1. 名前:時計じかけの名無しさん 投稿日:2017/10/01(日) 11:52:10 ID:9990d3f74 返信

    高級時計店「機械式のパワーリザーブ機構は、複雑かつ高度な技術を要するので最低30万円からの腕時計にしか付いていません」
    オリエント・セイコー・ミヨタ「…」