1969年7月16日。人類にとって新たな歴史が刻まれたその日、その時を月面で刻んだ時計、オメガ スピードマスター。
宇宙空間、そして月面で使用された唯一無二のスピードマスターは、「ムーンウォッチ」と呼ばれ、多くの腕時計ファンからリスペクトされています。
オメガとNASA。そして「成功した失敗」と称されるアポロ13号の運命の14秒間。今回はオメガムーンウォッチについて書いていきたいと思います。
オメガの誕生とスピードマスターの登場
1848年、ルイ・ブランが創立した小さな時計工房、それがオメガです。当初はオメガという社名を用いてはいませんでしたが、スイス内で着実に実績を挙げていき、1900年代には「究極」を意味するΩを正式社名として採用します。
1948年、防水機能を強化した「シーマスター」が発売を開始。シーマスターの手巻きクロノグラフ。これがのちのスピードマスターの原型です。
NASAとの出会い
1964年。マーキュリー計画で有人宇宙飛行計画に成功したアメリカは次なる計画、ジェミニ計画を遂行するために必要な腕時計の選定を始めます。
選定のミッションのためにNASAの職員は、一般に市販されている腕時計を4社集め、「腕時計を壊す試験」を実施します。これは無重力、真空、マイナス270度という過酷な宇宙空間での環境に対応できるか、そして宇宙船の打ち上げ、着陸時にかかる強力なGに耐えうるかという「通常では有りえない」環境を想定したものでした。
11項目もの厳しい試験を耐え抜き、なお時を刻み続けた時計、それがオメガ スピードマスターだったのです。
ムーンウォッチの誕生
1965年、ジェミニ4号と共に宇宙に旅立ったスピードマスターは、期待通りの役割を果たします。宇宙遊泳を果たしたエドワード・ホワイトの腕には正確に時を刻むスピードマスター。オメガの腕時計がムーンウォッチと呼ばれる4年前の出来事です。
そして1969年、とうとう人類は月面に到達します。約2時間にわたる月面での活動の最中、乗組員エドウィン・オルドリンの腕にもオメガ スピードマスターが装着されていました。
「一人の人間にとっては小さな一歩だが人類にとっては大きな飛躍だ」
この瞬間、オメガはムーンウォッチとしてその名を歴史に刻むことになります。
アポロ13号のトラブル
人類初の月面着陸から5年後、NASAは3度目の月面着陸を目指し、アポロ13号を打ち上げます。その時もスピードマスターは、宇宙飛行士たちの相棒として共に月に向かいました。
打ち上げから2日後、アポロ13号は突如トラブルに見舞われます。電気系統のトラブルにより酸素タンクが爆発、このままでは月面着陸どころか、地球への帰還も無事にできるか解らない状況に陥りました。
乗組員たちは着陸船を救命ボートに見立て、エンジンを逆噴射し、大気圏に再突入、地球への帰還を図ります。しかし、電気系統は全て消失し、正確にエンジンの逆噴射を計測するタイマーが作動しないという絶体絶命のピンチに陥ります。
逆噴射のタイムは正確に14秒。1秒でもタイムがずれてしまえば、地球への軌道には乗れず、乗組員たちは永久に宇宙を漂うデブリと化す可能性がありました。
運命の14秒
正確なタイマーがなく、絶体絶命と思われた乗組員たちの腕にはスピードマスター。彼らはこのスピードマスターを用い、14秒の計測を行うことを決意します。
1秒のズレも許されない状況、宇宙空間という特殊な環境の中、スピードマスターは正確に14秒を計測し、乗組員たちは無事に地球に帰還します。
それから40年以上も経った現在、アポロ13号の船長であったジェームズ・ラベル氏の腕には、今でも当時のスピードマスターが装着されています。
(中央:アポロ13 号船⻑、ジェームズ・ラベル氏)引用元:オメガ・ウォッチ
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>これは無重力、真空、マイナス270度という過酷な宇宙空間での環境に対応できるか、そして宇宙船の打ち上げ、着陸時にかかる強力なGに耐えうるかという「通常では有りえない」環境を想定したものでした。
これ聞くとG-shockより頑丈なのかなって気がしてくる。