新宿歌舞伎町を舞台に、「七つ屋の七瀬」と呼ばれる凄腕の鑑定師が主人公の物語。
その質屋に持ち込まれる様々なモノを起点に、それに関わる人々の人間ドラマが展開されていきます。
ちなみに、KAT-TUNの上田竜也さん主演で2017年にドラマ化もされました(個人的にドラマのほうはあまり観てませんが…)。
基本的に1話完結でさくさくテンポよくストーリーが進んでいくので、ついつい読み進めてしまいます。今回は『新宿セブン』の中でも、腕時計を中心に物語が展開される話をいくつか紹介していきます。
ネタバレありなので、気になる方は注意してください。
目次
『新宿セブン』のあらすじ
新宿歌舞伎町に質屋を構える「七瀬」という男が主人公。新宿一の鑑定士と言われており、「七つ屋の七瀬」とも呼ばれ一目置かれている。
その七瀬が営む七瀬質屋には、外国人・学生・セレブ・裏社会の人間などさまざま客が、バッグ・腕時計・拳銃などさまざまなモノを持ってくる。
七瀬はその卓越した目利きで、持ち込まれるあらゆるモノの真贋だけでなく、人の真贋も鑑定していく。
『新宿セブン』の主な登場人物
七瀬
新宿歌舞伎町に七瀬質屋という質屋を営んでいる30代くらいの男性。
目利きの天才であらゆるモノの真贋を見抜くことができるだけでなく、人の真贋も見抜くことができる天才的な鑑定眼を持っている。
↓表紙の男が七瀬。
新宿セブン(2) (ニチブンコミックス)
大野健太
七瀬質店で見習いをしている普通の青年。結婚詐欺の被害にあい絶望し、七瀬質屋のビルの屋上から飛び降りようとしていた。
その時に現れた七瀬の言葉に感動し、飛び降りをやめる。その後、鑑定眼を学ぶために七瀬のもとで見習いをやっている。
腕時計を中心に物語が展開する話をピックアップして紹介
第2話「ベトナムロレックス」
大野健太が婚約者の美鈴から結納返しとして、美鈴の父の形見である古いロレックスをもらう。
美鈴の父は報道カメラマンで世界中を飛び回っており、そのロレックスは父が海外で買ったものだと健太に言う。その数日後、健太は全財産を美鈴に持ち逃げされ連絡が途絶える。
その後、健太は「この時計の真贋がわかれば彼女の本心もわかるはずだ」と考え、七瀬質屋を訪れる。美鈴からもらったロレックスを鑑定してもらうと、七瀬から「30万円までなら融資できる」と告げられる。
時計が本物なんだから彼女の心も本物だ、と考えた健太は喜んだものの美鈴から連絡が来ることはなく、やっと見つけた美鈴のマンションももぬけの殻となっていた。
結婚詐欺師にだまされたと絶望した健太は、七瀬質屋のビルの屋上から飛び降りようとする。そこに七瀬が現れ、「近所迷惑だから死にたいならさっさと飛び降りろ」と発破をかける。
健太は「贋ロレックスを本物と鑑定してぬか喜びさせてくれたな」と怒るが、七瀬は贋物だということはわかっていたと返す。(30万円という額を聞いて、健太が勝手に本物だと思っただけで、鑑定時に七瀬は真贋については触れていない)
だったらなぜ預かったのか?という健太の問いに対して、七瀬は外観は贋物だが中身のムーブメントは本物だからだと返す。
これは通称ベトナムロレックスと呼ばれており、「ベトナム戦争後に残されたロレックスのうち金無垢ケースは潰され、残ったムーブメントを適当なケースに入れて作った時計をベトナムロレックスと呼び、稀に市場に出るんだ」と七瀬は解説する。
続けて、報道カメラマンだった父の形見というのは信憑性がある、だから最初から騙すつもりはなかったんじゃないかと諭す。
さらに、「女にも事情があるんだろう。男なら騙されたと思わずに、自惚れの気持ちを抱いたまま許してやれ」と説得。
健太はそれに感動して飛び降りをやめる。しかし、俺の鑑定眼にケチをつけたということで、七瀬に蹴飛ばされ健太は屋上から落下(段ボールが載ったトラックが手配されていて怪我はなし)。
そうして、「あの日以来七瀬さんに惚れてその下で鑑定眼を学ぶことにした」と健太が回想しているところに戻りこの話は終わる。
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第7話「競馬ジッちゃん」
競馬がある日にいつも時計を預けにくる「競馬ジッちゃん」と呼ばれるおじいさん。
七瀬はいつものように3000円でその時計を預かる。競馬ジッちゃんは「おぅ、借りすぎると返せなくなっちまうからな」と言って笑顔で店を出る。
健太がこんなボロい時計に3000円の価値があるのかと七瀬に尋ねると、このままでは売れないがきちんとオーバーオールすれば何万円にもなる機械式の名機だと説明する。
「グランドセイコーといって、セイコーがスイス時計に追いつき追い越した傑作だ!ロレックスのように押し出しのきくデザインじゃない。パテックのような上品さもない。だが極上の実用品だ。」
競馬ジッちゃんはいつものように、年金支給日の直後にその時計を取りに来た。
七瀬が古い時代の傷だらけの時計を見ると昭和のサラリーマンを連想する、と競馬ジッちゃんに語りかける。それに対して競馬ジッちゃんは、「俺もこの時計のように働いて働いて働き続けたもんよ」と感慨深そうに話す。
その翌日、テレビのニュースで競馬ジッちゃんがひったくりにあったことを知る。競馬ジッちゃんはバッグを手放さず、500メートル引きづられたあと電柱に激突し、意識不明の重体となっているという。
七瀬は、同業の質屋や知り合いの飲み合いに連絡し、犯人を見つけたら警察より前に自分に知らせるよう頼む。その後、飲み屋のママから連絡を受けた七瀬は現場に直行。ひったくりの犯人グループと対峙する。
犯人は競馬ジッちゃんの時計を、池袋の質屋に持ち込んだために顔が割れていた。だが、あれは俺の時計だと犯人のひとりが言い逃れをする。しかし、裏ぶたに「永年勤続記念」と彫り込まれていたと告げると、犯人の顔は曇る。
「ジッちゃんがバッグを必死に放さなかったのはその時計が入っていたからだ。古い傷だらけの時計でもそれは汗を流して得た報酬。愚直なサラリーマンの誇りなんだよ」
と、犯人を殴って時計を取り戻す。
一ヶ月後の競馬開催日、頭に包帯を巻いた競馬ジッちゃんが「また頼めるかな」と、七瀬質屋に来店して終わり。
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第21話「クレイジー・アワーズ」
平泉成に似ている客が「この時計を買い取ってくれ」と質屋七瀬を訪れる。
その時計は、フランク・ミュラーのクレイジー・アワーズ。七瀬は本物だと鑑定し、70万円の買い取りでいいかと確認。
すると客は「おう、時間がよく分からん時計なんぞ使えんからな」と言い承諾する。
その後、その客が期限切れ食品を売ったとして世間を騒がせているABフーズの社長だったと気づく。
それから数週間後、七瀬と健太が飲みに出かけたある居酒屋でABフーズの社長を発見し、やけ酒に付き合うことに。
食品偽装が発覚したあと、ABフーズは営業停止、倒産したという。社長は自らの半生を話し、自分に不釣り合いな美人な妻と結婚して頭の良い息子に恵まれて幸せだったと語る。
しかし、「さっき家に返ったら家具類など金目の物が売り払われてもぬけの殻さ」「電話しても繋がらなかった」と言い、金目当てだったのかと生気なく話す。
それに対し七瀬は、健太が結婚詐欺にあったことを話しなぐさめる。社長は同情して「今夜は俺のおごりだ」と健太に酒を注ぐ。
帰り道、もう一軒行こうと七瀬が誘うが、社長は「ヤボ用がある」と言ってひとり違う方向へ。
七瀬は、金のない社長が他人に奢るのはおかしいと思い、社長の後をつける。すると、ABフーズの倉庫で灯油を頭から被りライターで火をつけようとしている社長を目撃。そんなことしても保険金は下りないと止める。
七瀬は社長が売ったクレイジーアワーズは息子からのプレゼントだということを言い当て、さらにそのプレゼントに込められた思いを伝える。
「『人生を楽しもう』それがフランクミュラーの設計哲学だ。あの数字がクレイジーなのは時間に束縛されずに生きてほしいから。つまり息子さんは働きづめの父親に休んで欲しい、人生を楽しんで欲しいと願ってプレゼントしたんだ」
と語る。
そして七瀬は、奥さんと息子から社長の再出発のためにお金を作るために、家財道具を処分してくれと頼まれていたと明かす。さらに、心配した奥さんに頼まれて社長を探していたことを伝える。
節約のためスマホも解約していたため、連絡先を書いた置き手紙を家に残していたが社長はそれを見過ごしたと七瀬は言う。
続けて、社長の不幸の原因は倒産でもなく、金が無いからでもなく、家族を信じなかったからだと言い、家族を信じれば今でも十分幸せだと諭す。社長は「俺がバカだった」と言って、小さな新居に帰る。
「独身の身からすれば帰った家に灯が点いてるって羨ましいよな。ただそれだけで幸せってもんだろう。」と七瀬が健太に言ったところで終わる。
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まとめ:作者の腕時計愛が作品に活かされている
作者の方が腕時計好きということで、上記以外にも腕時計をネタにした話がけっこう出てきます。
たとえば、第13話「GMTマスター」、第20話「父のアラーム時計」、第39話「ムーンウォッチ」などですね。腕時計を中心にした話ではなくても、ところどころ腕時計のネタが出てきたりもします。
もちろん時計以外の話も面白くて、個人的にティファニーのティアドロップの話(第30話「ティアドロップ」)が印象に残っています。
アウトロー系の漫画なので、『ミナミの帝王』とかが好きな人はハマるんじゃんないかなと思います。
腕時計好きでもそうでな方でも楽しく読めると思うので、気になった方はぜひ読んでみてください。
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乙。
楽しく読ませていただきました。
質屋を主人公にした漫画もあるんだねぇ。